インコやオウムの色素 psittacofulvinとは?

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オウム目に存在する色素

オウム目に特有の色素psittacofulvin (シッタコフルビン)は、赤、オレンジ、黄色など、鮮やかな羽の色を生み出すもとになっています。他の多くの鳥が、食物から取り込んだカロテノイドによって羽色を作り出しているのに対し、オウムやインコは自らの体内でこのpsittacofulvinを合成します。このため、オウムやインコの羽色は、他の鳥とは異なる鮮やかな色合いを保っています。

Psittacofulvinの合成

Psittacofulvinの合成には、まずポリケチド合成酵素 (PKS)という酵素が重要な役割を果たします。PKSはpsittacofulvinの基本的な骨格を作り、赤色のpsittacofulvin分子を生成します。続いて登場するのがALDH3A2という酵素です。ALDH3A2はこの赤色のpsittacofulvin分子を酸化して構造を変え、黄色のpsittacofulvinに変換します。このため、ALDH3A2が多く働くと黄色が強くなり、働きが少ないと赤色が残りやすくなります。つまり、ALDH3A2の発現量が羽色を調整し、オウムの羽の色に多様性を生み出す鍵となっているのです。

このように、オウムの多様な羽色は、PKSによる色素の基本生成とALDH3A2による色の調整が組み合わさって作り出されています。

Psittacofulvinによる色彩のメカニズム

1. PKSの変異による色の違い

たとえば、野生のセキセイインコの黄色のpsittacofulvinは、羽毛の構造との相互作用 (構造色)によって緑色としても視認されます。野生のセキセイインコが緑色や黄色の羽を持つのは、体内にpsittacofulvinが豊富に含まれているためです。しかし、品種改良によって白色や青色のセキセイインコも誕生しました。これらのインコではPKS遺伝子に変異が生じているため、psittacofulvinの合成が行われません。色素がないため白い羽毛となり、さらに構造色によって青色に見えることもあります。

つまり、PKSが正常に働くと緑色や黄色の羽を持つ原色系のセキセイインコに、PKSが働かないと白色や青色の羽を持つセキセイインコになるということです。

2. ALDH3A2の発現量と羽の色

PKSによって合成されたpsittacofulvinの色は、ALDH3A2の発現量によって決まります。  

– 赤色の羽:ALDH3A2の発現が低い 

– 黄色の羽:ALDH3A2の発現が高い

ALDH3A2の発現量を決めているのは、この遺伝子の近くに存在する特定の遺伝子変異 (SNP)です。この変異があるとALDH3A2が多く発現するため黄色になり、変異がないとALDH3A2の発現が少ないため赤色になります。

引用

Price-Waldman R, et al. Avian Coloration Genetics: Recent Advances and Emerging Questions. J Hered. 2021 Aug 25;112(5):395-416.

TF Cooke, et al. Genetic Mapping and Biochemical Basis of Yellow Feather Pigmentation in Budgerigars. Cell. 2017 Oct 5;171(2):427-439.e21.

R Arbore, et al. A molecular mechanism for bright color variation in parrots. Science. 2024 Nov;386(6721):eadp7710.

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