白カナリアの遺伝性 (潜性遺伝)

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要約

・カナリアの黄~赤色の羽色は、食事から摂取されるカロテノイド色素の蓄積です
・scavenger receptor B1 (SCARB1もしくはSR-B1)というタンパク質がカロテノイド色素の細胞内取り込みを促進します
SCARB1遺伝子に変異があるとSCARB1の発現が上手くいかず、カロテノイド色素の取り込み機能が消失して、羽色は白色を示します
SCARB1の変異はメンデルの法則に従い、白色の表現型は潜性遺伝 (劣性遺伝)です
・したがって、両親のSCARB1遺伝子を調べることで、子の羽色を推測できます

父親♂
S/S
normal yellow canary
S/s
normal yellow canary
s/s
recessive white canary
SSSsss
母親♀S/S
normal yellow canary
Snormal yellow canarynormal yellow canarynormal yellow canary
S
S/s
normal yellow canary
Snormal yellow canarynormal yellow canary
or
recessive white canary
normal yellow canary
or
recessive white canary
s
s/s
recessive white canary
snormal yellow canarynormal yellow canary
or
recessive white canary
recessive white canary
s
S is a dominant allele, and s is a recessive allele of SCARB1.

カロテノイド色素とは?

カロテノイド色素は、鳥の羽や皮膚に色をつける黄色、オレンジ、赤色の色素です。カナリアの羽色は、パートナー選びの際に重要な役割を持つと考えられています。

この色素はカナリア自身が作り出すことはできず、食べ物から摂取する必要があります。

例えば、色揚げとして使用される着色餌は、カロテノイド色素 (βカロチンやカロチノイドなど)が豊富に含まれている餌です。

SCARB1とは?

カロテノイドを含む餌をカナリアが食べると、カロテノイドは消化管で消化、吸収されて肝臓で代謝された後、皮膚や羽に蓄積されます。カロテノイドが蓄積するとことで黄色~赤色の羽色を示します。

SCARB1というタンパク質は、カルテノイド色素を細胞内に取り込むはたらきを持ちます。すなわち、餌に含まれるカロテノイドは、SCARB1の助けを借りて細胞に取り込まれ、羽や皮膚に色をつけます。

しかしながら、SCARB1をコードする遺伝子の特定の領域 (exon 4)に点変異があると、SCARB1の発現が正しく行われずカロテノイド色素が体内に吸収されないため、羽や皮膚に色がつきません。すなわち、羽色は白色を示します。

カナリアのSCARB1遺伝子型と表現型について

SCARB1が正しく機能すれば、カナリアは黄色や赤色の羽を持ちます。一方で、SCARB1に点変異があって正しく機能しない場合、カロテノイドの取り込みができず、カナリアは白色の羽を持ちます。

この点変異はメンデルの法則に従い、白色の表現型は潜性遺伝 (劣性遺伝)です。SCARB1の両親の遺伝子型がS/S (顕性ホモ)もしくはS/s (ヘテロ) (表現型:黄色~赤色)の場合、及びs/s (潜性ホモ) (表現型:白色)の場合における子の遺伝子型および表現型は下表の通りです。

なお、通常のカナリア (黄色)と白カナリアでカロテノイドの量が違いますが、免疫系や抗酸化機能において差がないことが明らかになっています。したがって、カロテノイドが直接的にカナリアの生理機能を高めるわけではないことが示唆されています。

当店では、SCARB1の点変異 (exon 4)を測定することが可能です。鳥類の遺伝学的調査や適切な繁殖 (ブリーディング)に本検査結果をご活用ください。詳細はこちら

白カナリアの遺伝性は、SCARB1遺伝子による潜性遺伝 (劣性遺伝)です。

引用

MB Toomey, et al. High-density lipoprotein receptor SCARB1 is required for carotenoid coloration in birds. Proc Natl Acad Sci USA. 2017 May 16;114(20):5219-5224.

RE Koch, et al. No evidence that carotenoid pigments boost either immune or antioxidant defenses in a songbird. Nat Commun 9, 491 (2018).

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